読んでいただきありがとうございます。
翔です(/・ω・)/
今回は心理学に関するクイズを出していきたいと思います。
読んでいただくのはショートストーリーです。
違和感の無い文章に見せかけて、実は誘導テクニックが盛り込まれたストーリーをお見せできればと思います。
カップルでのディナー
あなたは、彼女の誕生日をお祝いしようと、少しばかり背伸びした高級店にやってきました。
入口で出迎えてくれたスタッフの案内で、テーブルにつきました。
彼女はワクワクした表情で店内の様子を見ています。
「すごいお店だね。けっこう高そうなお店だけど大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、せっかく来たんだ、楽しもう」
あなたは、スタッフからコースメニューを受け取りました。
12,000円、8,000円、6,000円の3つのコースから真ん中の8,000円のコースを頼もうかな……と思っていると、スタッフから7,500円の季節限定メニューをすすめてくれました。
少しお得な価格だけでなく、彼女の好きな料理も一品としてコースに入っていました。
そんなあなたはスタッフがすすめてくれた季節限定メニューを選びました。
これは心にもお財布にもうれしい滑り出しです。
しかも、一度メニューを持って下がったスタッフがすぐに戻ってきて、シャンパングラスを2つサーブしてくれたのです。
「当店からささやかではありますが、お誕生日のお祝いです。
食前酒としてお楽しみください」
素敵な誕生日ディナーの始まりでホッとするあなた。
しかし、すぐに緊張の瞬間がやってきたのです。
それはワインリストでした。
普段、あなたはほとんどワインを飲まないので何がなんだかわかりません。
何を頼んでいいか全く見当がつきませんでした。
ソムリエから受け取ったワインリストを手に固まっていると、彼女も少し心配そうにしています。
すると、低いトーンの声で問いかけがありました。
「お連れ様は、どのような味わいのワインがお好みでしょうか?」
視線を上げると、そこにはソムリエが微笑んでいました。
あなたは促されるように
「どんなのが好き?」
と彼女に目を向けます。
「少しすっきりした味のほうが好きかな」
と彼女は応えました。
「でしたら、こちらのワインはいかがでしょうか。香りはフルーティですが、すっきりした辛口で、女性にたいへん喜ばれております」
ワインリストで確認すると少々予算オーバーでした。
ですが彼女が喜ぶならと思い、あなたは納得しました。
「それでお願いします」
手の込んだ料理とおいしいワインを楽しみ、メインを食べ終えました。
彼女がトイレに立つと、ワゴンデザートが登場しました。
すると、入口で出迎え、最初にシャンパングラスをサーブしてくれたスタッフがあなたに近づいてきました。
「ご希望でしたら、デザートをバースデー仕様にいたしますが…」
と耳打ち。
もちろん断る理由などありませんでした。
お店のスタッフは彼女が席に戻るタイミングを見計らい、ハッピーバースデーの歌とともにバースデーデザートをサーブしてくれました。
締めのデザートで笑顔溢れるサプライズをできたあなたは、
「考えていたよりも高かったなぁ…」
と不思議に思いながらも、彼女と二人、
「本当にいいお店だったね」
と笑顔を交わしました。
大満足でお店を後にしたのでした。
知らないうちに誘導させる心理術
いかがでしたか?
あなたは気付けましたか?
知らないうちに誘導させる心理テクニックに。
いったいどこに?と思われたのでしたら、もう一度、間違い探しをする気持ちで読み返してみてください。
もし気付けたのでしたら、それはいくつ気づけましたか?
次の項目から答えを書いていきます。
誘導テクニックは全8つ
今回のショートストーリーで使われた誘導テクニックは全部で8つです。
あなたはいくつ気づけましたか?
では、一つずつ解説していきます。
初頭効果
まず一つ目のテクニックは「入口で出迎えてくれたスタッフ」による「初頭効果」が使われていました。
「初頭効果」とは、最初の印象が強く残る心理学的な反応です。
これは無関心な相手にとくに有効です。
入口で出迎えてくれたスタッフというのは、まさにおもてなしとして定着している行動です。
予約客を入口まで出迎えに行くというのは、一流のサービスを売りにしている接客業では当たり前のように行われていることです。
もしかしたら、あなたもこれまでにどこかでこうした出迎えを経験しているのではないでしょうか。
そして、それは決して悪い気はしなかったはずです。
こうした行動が相手の心に対して一定の効果を与えていることは、心理学的に証明されているのです。
今回のように、やや緊張しながら出向いた先で、温かな出迎えを受けたとしたら、あなたもうれしさや安心を感じるのではないだろうか。
そして、それはお店に対する好印象として強く作用するのです。
それが「初頭効果」を利用した入口でのお出迎えなのです。
ゴルディロックス効果
二つ目の誘導テクニックは「ゴルディロックス効果」を利用した「メニュー選びの時」です。
渡されたメニューを開いたときにこの二つ目のテクニックにはまってしまったのです。
もう一度振り返ります。
12,000円、8,000円、6,000円の3つのコースから真ん中の8,000円のコースを頼もうかな…っと思っていたら、スタッフが季節限定メニュ―をすすめてくれたところです。
メニューに価格の異なる3つのコースを載せて、お店側が一番売りたいコースを選ぶように導いていくテクニックがここで利用されたのです。
私たちは何かを決めるとき、価格の選択肢が2つしかなく、しかも参考になる情報が少なければ、安いほうを選ぶ傾向にあります。
ところが、選択肢が3種類になると、中間の選択肢に強く惹きつけられていくのです。
いわゆる購買心理の法則ですね。
どうして中間を選びがちになるかと言いますと、
手頃そうだから…といった理由で真ん中のコースに信頼感を寄せるのです。
この価格差ですが「6:4:3」が効果的だと言われています。
ゴルディロックス効果は別名「松竹梅の原理」とも呼ばれているのです。
このテクニックは様々な業界で使われているテクニックですので、あなたも知らないうちに誘導されている可能性が高いですよ。
返報性の法則
さきほどのメニューのやり取りですが、もう一つ仕掛けがありました。
その三つ目の誘導テクニックが「返報性の法則」を利用した「季節限定メニュー」なのです。
主人公がメニューから中間の選択肢に決めようとしましたら、スタッフが真ん中のコースよりも少し安い7,500円の季節限定メニューをすすめてきました。
最初から「季節限定メニューはいかがですか?」とアプローチしてしまいますと、極端性を回避する心理が働き、他の選択肢と比較して選びたくなってしまうのです。
ところが、先にメニューを渡して選んでもらいながら最後にひと押ししますと、あたかも自分で決めたような錯覚になるのです。
しかも、この主人公は自分が考えていたコースよりも安いコースをすすめられたことで、このスタッフをお店の損を厭わない良い人と捉え信用するようになるのです。
また、無料のサービスをコースの始まる前にプレゼントされたことも大きく影響しています。
人は他人から何かをしてもらうと「お返しをしなくてはならない」と考えます。
今回の主人公は最初に、シャンパンという非日常の飲み物を無料で受け取ったがために、返報性の原理が効いてしまったのです。
単純接触効果
四つ目のテクニックは「単純接触効果」を利用した「同じスタッフ」です。
単純接触効果とは、会う回数が増えれば増えるほど、親近感を覚えていく心理効果です。
今回のストーリ―では、同じスタッフが出迎え、メニューの決定、シャンパンサービスと3回接触しています。
このスタッフはわずかな時間のあいだに何度も接触して密かに親交を深めていたのです。
混乱法
五つ目のテクニックは「混乱法」を利用した「不慣れなワインリスト」です。
相手を迷わせてから判断を手助けするのが、この混乱法になります。
人は判断に迷う状況に身を置くと、考えるのが面倒になり、差し出された答えに賛同しやすくなります。
それも自分に知識が不足しているほど、専門家からの意見に流されやすい傾向にあるのです。
今回、主人公は不慣れなワインリストを手にし悩み始めたところでタイミングを見計らって、ソムリエはアドバイスを始めました。
これはまさしく混乱法を狙った誘導です。
なので、主人公はソムリエという信頼できる専門家のアドバイスに、しかもちょっと高めのワインを注文してしまったのです。
社会的証明
六つ目のテクニックは「社会的証明」を利用した「女性に大変喜ばれています」というセリフです。
社会的証明とは、「周りと同じことをしたい」という心理です。
この心理効果は非日常の空間ほど強く働きます。
まず、そもそも男性は見栄をくすぐられると後に引けなくなる生き物です。
彼女に希望を言わせた時点で、それを叶えてあげたいと思うものです。
そして、主人公にとってソムリエからの「女性に大変喜ばれています」は「素晴らしいワインを選ばれましたね」という称賛に聞こえたのでしょう。
たとえ、値の張る逸品だとしても「君のために」という心理になっていくのです。
男って単純ですからね。
クロスセル
七つ目のテクニックは「クロスセル」を利用したいわゆる「ついで買い」です。
日常で例えるなら、「ご一緒にお飲み物はいかがですか?」とすすめるような手法です。
人は一度でも購入を決定してしまうと、心理的に無防備な状態になりやすい性質を利用したテクニックです。
購入した商品と関連性の高いものを提案されるとつい買ってしまう傾向にあるのです。
よくネット通販などでも、「この商品を購入された人は、こちらの商品も購入しています」みたいな案内を見ることがあるかと思います。
まさしく、これですね。
コントラストの原理
八つ目のテクニックは「コントラストの原理」を利用した「金銭感覚の狂い」です。
コントラストの原理とは、たとえば、30キロのお米を持ち上げた後、5キロの水を持っても、それほど重いとは感じませんよね。
ですが、逆に最初に5キロの水を持ったら重みを感じるはずです。
このように、人は先に強い刺激を受けていると、次にやってくる刺激に対して鈍くなってしまうのです。
これはお金の支払いにも通じます。
主人公はコース、ワインと高い買い物を済ませた状態にあるにも関わらず、スタッフから誕生日のサプライズという形でのクロスセルを受けたわけです。
バースデーデザートへの追加料金など、もはや気にならない状態になっていたわけなのです。
まとめ
よく振り返ってみてください。
お店側は、たった1杯のグラスシャンパンサービスによって、頼んでもらいたいコースを選ばせ、高いワインやデザートの追加料金ををとり、見事に客単価を上げることに成功しているのです。
しかも、お店による誘導テクニックに気づかず、カップルは疑うことなく「いいお店だった」と言って帰っているのです。
逆にこれらの誘導テクニックが使えないお店だったパターンもイメージしてみてください。
たった1杯のグラスサービスすら出せず、頼んでもらいたいコースへ誘導できず、高級ワインやデザートなどの追加料金を取ることができなかったかもしれません。
「いいお店だった」ということでまた次につなげるチャンスができたわけです。
そう思って終わることができただろうか。
デキる人、デキるお店というのは、知らず知らずに誘導テクニックによって自分たちの良いように利用しているものです。
利用された、騙されたと悔しがるか。
幸福な贈り物を頂けたと満足するか。
物事は常に表裏一体です。
あなたは、どちら側の人間でしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。